
インド北部のウッタラカンド州、ヒマラヤの麓から流れ出たガンジス川が平野部へと移り変わる地点に、リシケシがある。ヨガや瞑想を学びに来る人が世界各地から集まる場所として「ヨガの都」と呼ばれる。川沿いにはアシュラムが並び、日が沈むと川辺で火を灯す儀礼が行われる。
観光地の顔と修行の場の顔を併せ持つ都市だ。数日滞在してヨガの授業を受けて帰る旅行者もいれば、数か月にわたりアシュラムに入って規則正しい一日を送る人たちもいる。
パルマルト・ニケタン、1942年からガンジス川のほとりに立つアシュラム
リシケシで最もよく知られるアシュラムの一つが、パルマルト・ニケタンだ。ラムジュラ橋の近くのスワルガシュラム地区で、ガンジス川のすぐそばに位置する。1942年に設立され、町の中でも規模が最大のアシュラムとして挙げられる。
ここの一日は、午前5時の起床の鐘で始まる。5時30分の朝の祈りと瞑想、6時30分のヨガ・アサナの授業、8時30分の礼拝と朝の供養で午前が過ぎる。午後1時には菜食中心の昼食をとり、午後3時と4時にも再びヨガと瞑想の時間がある。日没前後には川辺でアールティの儀礼が開かれ、夜7時の瞑想、8時の夕食の供養で一日を締めくくる。

決められた時間割に沿って暮らすこと自体が、ここで得られる体験だと言う人が多い。何をいつするかを自分で決めなくてもよい数日が、心の雑音を減らすという。
日没のころの川辺アールティ
リシケシを訪れる人が最もよく覚えている光景は、川辺アールティだ。川に向けて火を灯し、ヴェーダの賛歌を歌いながら進める夕方の儀礼で、パルマルト・ニケタンの川沿いの階段で毎日行われる。時刻は季節によって異なる。10月から3月までは午後5時から6時の間、4月から9月までは午後6時から7時の間に実施される。
席を確保するには、45分ほど早めに行くのがよい。宗教儀礼ではあるが見学は開かれており、静かに座って見守るだけでも、瞑想に近い時間になる。

国際ヨガフェスティバル、毎年3月にガンジス川のほとりで
パルマルト・ニケタンは、毎年3月に国際ヨガフェスティバルを開く場所でもある。インド政府のフェスティバル・ポータルによると、第36回大会は2024年3月8日から14日まで行われ、ハタ・ヨガからアーユルヴェーダまで150を超える授業が用意された。世界各国のヨガ指導者やスピリチュアル講演者、音楽家が参加する。
迫る2027年の大会は3月9日から15日まで、同じ場所で開催される。参加申し込みは国際ヨガフェスティバルの公式サイトで受け付ける。この期間は町全体が混み合うため、祭り参加が目的でないなら日程を避けたほうが、落ち着いた滞在に有利だ。
ヨガと瞑想はどうやって学ぶのか
リシケシで学ぶヨガは、体をつくる運動とは距離がある。アサナの授業はたいてい早朝に開かれ、呼吸法と座った姿勢(正坐)がセットになっている。アシュラムの授業は、参加者のレベルを細かく分けるよりも、同じ時間に同じ順序を繰り返すほうに近い。初めて来た人にはついていくのが大変でも、数日たつと体が順序を覚える。
瞑想の時間は、案内が長くない。座り方と呼吸を確認したあと、沈黙が続く。何を感じるべきかを教えないやり方が、最初は戸惑いとして受け止められることもあるが、ひとりで観察することを残しておくのが、ここらしい伝統に近い。
食事も修行の一部として扱われる。菜食中心の、シンプルな食事が決まった時間に出てきて、静かに食べることが基本だ。何を食べるかを選ばなくてもよい数日が、思いがけない余白を生むのだと話す旅行者もいる。
ビートルズが滞在した町
リシケシは、1968年にビートルズのメンバーが瞑想を学ぶために訪れた場所としても知られる。彼らが滞在したアシュラムの建物は今も残っており、国際ヨガフェスティバルの期間中は参加者の訪問コースにも含まれる。西洋にインドの瞑想が知られるきっかけとなった場面が、この町で生まれた。
その後、半世紀が過ぎる間に、リシケシは巡礼地であり、ヨガの学びの場であり、旅行先でもあるという性格を併せ持つようになった。ガンジス川沿いにはアーユルヴェーダのクリニックやカフェが増え、上流側ではラフティングを楽しむ人たちにも出会う。修行と観光が、同じ都市の中で重なって見える風景だ。
滞在の仕方と費用
パルマルト・ニケタンの宿泊は、寄付金の形で運営される。旅行情報メディアがまとめた2026年時点のデータによると、ドミトリーは500〜600ルピー、2人部屋は800〜1,000ルピー(エアコン付きの客室)、4人部屋は1,600〜2,000ルピーが目安で、ヨガとサトサン(祈りのプログラム)、アールティへの参加が含まれる。金額や部屋構成は変わり得るため、公式予約ページ(parmarth.org/reservations)で確認するのが正確だ。予約は最低でも一週間前、繁忙期は一か月前にするのが安全とされる。
滞在中に守るべきルールもある。肩や膝が隠れる服装、午後10時の正門閉鎖、宿泊エリア内での静粛だ。飲酒と肉食はアシュラム内では認められない。

行き方と良い時期
最寄りの空港は、デラドゥンのジョリグランド空港で、リシケシから31kmの距離だ。タクシーなら40分前後で、料金は1,000〜1,200ルピー程度と案内される。鉄道で行く場合は、ヨグ・ナガリ・リシケシ駅が16kmの距離にある。市内からラムジュラかジャンクィ・セートゥまで、相乗りオートリクシャーで20〜30ルピーで移動できる。
訪れやすい時期は10月から3月までだ。暑さが和らぎ、空が澄み、川辺に長く座っていられる季節になる。夏は暑く、6月から9月まで続く雨季にはガンジス川の水位が上がって予定に影響を及ぼす可能性がある。
行く前に知っておくこと
リシケシにはアシュラムやヨガ教室が非常に多く、レベルもそれぞれ異なる。国際ヨガ指導者課程をうたうところの中には、検証されていない施設も混じるため、滞在期間が長いほど事前調査が必要になる。アシュラムごとにルールや生活のあり方が違うので、自分が望む密度を先に決めるのがよい。
韓国から直接リシケシへ向かう航空便はない。デリーを経由して国内線か、陸路で移動する方法が一般的だ。具体的な航空日程とビザ要件は、出発前に必ず最新情報を確認しなければならない。
瞑想旅行の目的地としてのリシケシ
バリのウブドがウェルネス・リゾートやヨガ・スタジオを中心に成長したのに対し、リシケシはアシュラムという古くからの修行共同体の形式をそのまま保ちながら、世界の旅行者を迎えてきた。決まった時間に起きて座り、いっしょに食べ、日が沈むころに川辺へ集まる一日が、瞑想を学びに来た人にとっては、プログラム以上のものを残す。
利便性を前面に出すリトリートとは、手触りが違う。冷房のない部屋や早い起床、シンプルな菜食中心の食事に耐えられるかどうかが満足を左右する。その条件を受け入れる準備がある旅行者にとって、リシケシは短い休暇ではなく、生活のリズムをもう一度組み直す場として残る。
